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東日本大震災

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東日本大震災を改めて検証する(RC77防災研究会報告書より)

※RC77防災研究会:東京大学生産技術研究所における産学特別研究会「防災ビジネス市場の体系化に関する研究会」、弊社は目黒公郎教授の指導の下、地震津波に関する調査研究ならびに津波防災対策としてのシェルターの研究開発を進めています。

東日本大震災では巨大な津波が被災地を襲い、多くの尊い人命が犠牲となった。事前に何を準備しておけばより多くの人命が救われたのか、何が足りなかったのかが議論され、様々な対策が進められているが、未だに解決できない課題も少なくはない。東日本大震災による約2万人の犠牲者の9割以上は津波によるものであり、その約半数は高齢者や要介護者であり、これら要配慮者への対策は喫緊の課題である。

東日本大震災における岩手県大槌町の被害状況をもとに、特に高齢者や要配慮者の津波襲来時の行動分析から最善の対応を行ったときの被害想定を行い、さらにリスクマネジメントの観点から各種避難施設のメリット・デメリットの検証等から高齢者・要配慮者の救命率向上のための方策を中心に津波防災対策について検討を行っていく。

(1)大槌町と高齢者を中心とした津波被害状況

大槌町町勢要覧・おおつちの歴史によれば大槌は大槌氏の城下町として、江戸の町の発展に伴い、鮭の塩引き(新巻)やいりこ、干し鮑、干しするめ、鰹節、赤魚の干物や海藻など水産加工品の他、木材などを出荷するなど、南部藩随一の豪商の街として栄えた。水産加工品は船で江戸を中心に、遠くは大阪まで運ばれた。
町は大槌城址のふもとの大槌川と小槌川の間に挟まれる町方地区を中心として、また近年はJR山田線大槌駅を中心としたエリアを中心として、養殖を中心とした水産業や伝統的な水産加工業を主な産業として発展してきた。
平成23年3月11日東北沖を震源とする大地震は巨大な津波を発生させ、大槌町では地震発生約30分後に波高12.6mの巨大津波が押し寄せた。この津波により大槌町では約1200名の尊い命が犠牲となったが、町方地区と呼ばれる町の中心部に犠牲者が集中し、約半数の600名以上がこの地区での犠牲となり、町方地区では人口に占める犠牲者の割合が14.3%となった。また、その特徴として60歳以上の高齢者死亡率が75%に達した。

(2)高台への避難階段に近い中心部(末広町)でも多くの高齢者が犠牲になった

大槌町は大槌駅前通り近辺の本町、末広町、大町が中心部の人口密集地であるが、この地域の犠牲者は町方地区の犠牲者の40%を占め、人口密度の高い地区の犠牲者割合が大きくなっている。この地区の避難場所は高台の中央公民館と江岸寺背後地であるが、町から避難場所の高台へは急峻な崖となっており、避難路は1本の道路あるいは急勾配な3本の歩道に限られる。本町では津波襲来が見えてから急いで中央公民館に避難したとの避難者の証言もあり、距離的に近い避難場所だが、避難路への回り道、30mの登行が高齢者の避難を阻害したものと思われる。また、特に犠牲者の多かった末広町では街並みが津波襲来方向に沿って連なっていることから、津波襲来の確認が難しく避難が遅れ犠牲者が多くなった可能性もある。

(3)中心部から離れた住宅地(新町)からは、高齢者にとって高台への避難階段が遠すぎた

大槌町中心部の北東に位置する新町は、その名が示すように戦後の高度経済発展の時期に住宅地として開発されたものと思われる。ここに移り住んだ当時の年代は既に高齢期を迎え、このような高齢者のいる世帯では、日中の間高齢者が長時間一人になる率は7割以上になるという報告(都市部)もあり、避難を困難にしたと思われる。しかも避難場所の江岸寺高台への距離が300~400mと長く、その先には標高差30mの登行が控えている。
被災状況を見ると、80歳以上の犠牲者割合が大きく、60歳以上の高齢犠牲者の割合が79%に達している。高齢犠牲者の多くは自宅で被災したか、自力で避難場所への避難を試みても途中で津波に巻き込まれた可能性が高い。

(4)新興住宅地では2階へも避難できない日中独居老人が犠牲になった

桜木町は大槌川の支流の小槌川沿いに開発された比較的新しい住宅団地と思われる。住宅の多くが津波襲来後も残っており、標高5m程度のこのエリアにおいては、津波本流が大槌川をさかのぼる中、支流の小槌川では水位上昇が発生し、1階部分程度の水没となった可能性がある。(生存者の証言による)
犠牲者の人数は少ないものの、そのほとんどが80歳以上であり、2階への避難も困難な高齢者が1階に取り残され、犠牲となったものと思われる。
平成30年7月の西日本豪雨でも岡山県真備町で日中独居老人と思われる多くの高齢者が建物の1階部分で犠牲となった。

(5)最善の避難でどの程度犠牲者を少なくできるか。(ミクロ分析)

大槌町の中心部の町方地区(本町、末広町、大町、上町、栄町、須賀町、新町)では人口4483名中639名が津波により死亡し、死亡率は14.3%となった。また、死亡者639名中60歳以上の高齢者は480名に達したが、津波が来てから避難した人も多く、もし初動体制が速やかで最善の避難ができた場合、どの程度犠牲者を少なくできたかについて推測する。
表に「石巻市津波犠牲者の居場所及び行動調査結果(以上文献1参照)と避難不可率の想定について」を示す。
文献1:地震予知総合研究振興会、三上卓「東日本大震災の津波犠牲者に関する調査研究~山田町、石巻市~」土木学会論文集A1、Vol70、No.4、2014

最善の避難ができる場合、避難不可率を0、いかなる状況でも避難が難しい場合を避難不可率1.0とし、日中要援助者が援助者の介助を得られない場合などを想定し避難不可率を設定する。
その結果、現状の犠牲者の行動に対し、避難不可の割合は約1/3となった。従って、この率を大槌町町方地区に適用すると、避難不可犠牲者は210名となる。これは人口4483名の4.7%に相当する。
南海トラフ地震において津波犠牲者を想定すると
避難不可犠牲者=32万人×0.5(高齢者犠牲率)×0.33(避難不可率)=5.3万人
従って、少なく見積もっても2万人の避難不可犠牲者が想定され、南海トラフ地震では2万人から5万人の更なる救命対策が必要となる。

(参考)・・・家族はいるけれど ~急増“日中独居”高齢者~
(埼玉県幸手市・NHKクローズアップ現代より)
介護サービスが行き届かない世帯に向けて自治体と住民が連携し、独自の対策に乗り出しています。まず行ったのは、日中1人で過ごす高齢者がどれだけいるのか把握する調査です。個別に家庭を訪問して事情を詳しく聞き取り、これまで見過ごしてきた日中独居の実態をつかもうとしています。
調査の結果、高齢者がいる世帯230軒のうち174軒が、日中1人でいる時間が長いことが分かりました。

(6)マクロ的な避難不可率の想定について

マクロ的分析として、要介護受給者、障害者や介護者、運転できるが登行困難な免許交付弱者の合計から施設入所者を引いた推定数から避難不可率を推定する。更に高齢化率が上がったと仮定したときの避難不可率を推定した。


この結果から、大槌町中心部の町方地区の高齢化率を仮に40%とすると、地区人口に対する避難不可率は4%となり、避難不可犠牲者数は約180名となった。

以上よりミクロ的分析、マクロ的分析いずれにおいても大槌町中心部の避難不可犠牲者数は約200人(犠牲者数の約1/3)、人口比約4.5%となり、高齢化率に対する推定避難不可率は下図のように想定される。

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